〇年保証のコーティングが保証していること

新車購入時にガラスコーティングを施工される方は多いと思います。追加料金を払うのが普通だと思いますが、時には値引きできない代わりといって提供される場合もあるようですが、見積書上の料金は5万~15万程度なのかと。そして、引き渡し時に渡されるガラスコーティングの施工証明書は保証書も兼ねているのが一般的なようです。ただ、残念なことに、高いお金を払っている(値引きの代わりも含む)にもかかわらず、この保証書が何を保証しているのかをご存知ない方がとても多いのです。

保証書の内容を熟読すれば簡単に理解できるはずですが、人間はパッと頭に入ってくるキーワードに弱いようです。「5年保証」と聞いた瞬間に、コーティング皮膜の持続が5年間保証されると自分に都合よく理解するはずです。でも、実際に保証書に実際に記載されている保証内容は要約するとこんな内容です。

保証期間中に塗装面に著しい劣化がみられた場合はコーティングを再施工する。ただし、樹脂部分等の劣化しやすい箇所は除く。

え????、と思いませんか?

そうなんです。高いお金を払って施工してもらったガラスコーティング皮膜そのものを保証しているわけではなく、あくまでもクルマの塗装面の輝きを保証しているだけなのです。クルマの塗装は本当に素晴らしいクオリティーであり、コーティングの有無に関わらず5年程度の短期間で著しく劣化するようなものではありません。写真のシルビアは当社代表者が新車から21年以上乗り続けており、これまでガラスコーティングは一度も施工していませんが、それなりの輝きは維持できてます。

そして、保証書にはさらに重要なことが記載されています。保証対象外になる場合です。いったいどんなことが書いてあると思いますか?

<保証対象外になる場合>

  • 年1回の点検を受けなかった場合
    誰がどのように点検をするのか、その点検内容に興味津々ではありますが、保証条件としては点検という行為は一般的なことなので、ここは軽く流しておきます。
  • タオルや雑巾などの硬い布地を使って洗車した場合
    非常に曖昧な表現です。非常に重要な保証対象外の条項に記載するくらいならもっと具体的に書かないと意味がありません。ちなみに、柔らかいマイクロファイバーを使ったとしても、力の加え方を間違ってしまえば簡単に洗車キズはつきます。一方、普通の温泉タオルを使ったとしても、正しく力を加えれば洗車キズはほとんどつきません。カーケアのプロなら布地の硬さが問題ではななく、力の加え方が問題であることを理解しているはずなので、少なくともこの保証書の条項を起案した方はカーケアに関する見識は少ないのではないかと推察されます。
  • メンテナンスキット以外のケミカルを使用した場合
    メンテナンスキットをお客さまに渡すスタッフの方は本当にこのメンテナンスキットだけでクルマの美観を維持できるとお考えなのでしょうか。保証対象である「塗装面に著しい劣化がみられた場合」に該当しない程度に維持することは、このメンテナンスキットだけでも可能ですが、シミひとつ無い美しい状態を維持することは、このメンテナンスキットだけでは絶対に不可能です。
  • コンパウンド入りのワックスを使った場合
    これについてはまったく異論はありません。
  • 煤煙、降灰、樹液、花粉、酸性雨、薬品、鳥糞、塩害、鉄粉、飛石、虫の死骸、ペットの糞尿等の外的要因
    これは正直驚きです。ここに記載されている外的要因はクルマの輝きを奪う原因のほぼ全てです。もしこれら以外の理由で塗装面の光沢が失われることがあるとしたら教えていただきたくらいです。

なかなか刺激的な内容だと思いませんか?

最後の(5)の条項の存在により、この保証できるものが無くなってしまうので、この保証書が実質骨抜きにされているといえます。そこに記載されている「外的要因」以外の要因でクルマの塗装面の光沢が著しく失われるとすれば、それは塗装自体の瑕疵くらいしか考えられないからです。

ただ、元損保社員である当社代表者が、この保証書がもつ別の意味を考察してみました。

この保証書がその役割を発揮するのは事故が起きた時です。損傷個所を修理するために鈑金塗装等を行なう際に、この保証書があることによって修復箇所にコーティングを再施工してもらえるのです。損保会社の査定はかなり厳しいです。仮に、事故発生時点で既にコーティング皮膜が喪失しておりコーティングの効果が残っていなければ、損保会社の査定上の考えでは再施工は認められないはずです。なぜなら、損害保険の原理原則は原状復帰だからです。事故時点で既に無かったモノは保険の支払いの対象になるはずがなのです。そもそも、コーティ ング 皮膜なんて見えないので確認のしようもなのですが・・・。

当社の感覚(目に見えないのであくまでも感覚)では、ガラスコーティングを施工後数か月もすれば、おそらく皮膜は喪失してしまっているのが普通です。5年間も残っているなんて絶対にありえません。ということは施工してから3年後に事故が起きた場合は、損保会社は再施工費用を保険金として払わないはずなのですが、この保証書があることで払われてしまうのです。自動車ディーラーは損保会社にとって自動車保険販売の最大チャネルです。その自動車ディーラーが自動車メーカーと組んで販売しているガラスコーティングを損保会社がバックアップしないわけがないのです。

あまり書くと色々と問題がありそうなのでこの程度にとどめておきます。事故を起こしてしまったオーナーは費用を払わずに再度コーティングをしてもらえるのですし、ディーラーとしても再度施工費用として保険金を受領できる。みんなハッピーです。なかなか上手くできた仕組みだと思料します。